撮影した画像をプリントした場合、画像とプリントの画角の違いから、画像の一部が意図せずケラレてしまい不満に感じた経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
撮影に使用しているカメラのアスペクト比や最終的に仕上げるプリントの縦横比を理解することで解消できるので、参考メモとして下記にまとめてみました。
また、美しいプリントとはどういうものか?黄金比率、白銀比率の観点からも写真プリントを見ています。
メモ関連まとめ
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カメラによって違うアスペクト比
カメラによって搭載されているCCDやCMOSの撮像素子のサイズやアスペクト比(縦横比)は異なっています。
これにより、例えば、3:2のアスペクト比の撮像素子を搭載したカメラで撮影すれば、作り出される画像の縦横比も同じ3:2となります。
下はカメラごとのアスペクト比とアスペクト比を用紙サイズと比較しやすいように縦横比に変換した表になります。
カメラの種類 | アスペクト比 | 縦横比に変換 |
---|---|---|
中判デジタル | 4 : 3 | 1 : 1.34 |
35mmフルサイズ | 3 : 2 | 1 : 1.5 |
APS-C | 3 : 2 | 1 : 1.5 |
フォサーズ | 4 : 3 | 1 : 1.34 |
コンパクトデジカメ | 4 : 3 | 1 : 1.34 |
フィルム時代は、最も一般的であった35㎜フィルムのアスペクト比は3:2であり、その後登場したAPSフィルムも3:2となっていました。
1990年代後半コンパクトデジカメが出始めた当初は4:3のアスペクト比が主流になりました。
これは先行してCCDなどの撮像素子を取り入れていたビデオカメラなどのアスペクト比が4:3であったことが影響しているとの事です。
その後、高品位の35mmフルサイズおよびAPS-Cサイズカメラにおいては3:2のアスペクト比の撮像素子が採用されていますが、これは35mmフィルムカメラユーザーにも違和感なく使えるように配慮されたためと言われています。
それが更に最新、高級な中判デジタルとなると、翻って4:3を採用しているものが目立ってきます。
何故中判デジタルにおいては、4:3が主流なのか?には諸説(ビデオ、645判)ありますが、カメラのアスペクト比が技術、文化、歴史の兼ね合いから仕様が決定されているというのは興味深いところです。
もちろん上記は各カメラ初期設定のアスペクト比の話であり、後から自身で変更可能な機種もあります。
この場合、搭載されている撮像素子のサイズをフルに使用せず、限定してイメージ取り込むことで異なるアスペクト比の画像を生成しています。
変更可能なアスペクト比 | 備考 |
---|---|
16 : 9 | HDハイビジョン対応テレビなどと同じ縦横比 |
3 : 2 | 35mmフィルムと同じ縦横比 |
4 : 3 | HDハイビジョン非対応テレビなどと同じ縦横比 |
1 : 1 | 正方形 |
4 : 5 | 肖像画などに見られる縦横比 |
写真用紙サイズ・縦横比
ではどういった写真サイズでプリントすれば、ケラレが少なくプリントできるのか、下表に写真サイズとその縦横比をまとめています。
これら以外にも写真用紙にはその他多様なサイズがありますが、現在において、一般の写真店でプリントできたり、自宅インクジェットプリンタ用として入手できるサイズのみここでは記載しています。
写真用紙サイズ | 寸法(mm) | 縦横比 |
---|---|---|
DSC | 89 x 119 | 1 : 1.34 |
L判 | 89 x 127 | 1 : 1.43 |
パノラマ | 89 x 254 | 1 : 2.85 |
はがき | 100 x 148 | 1 : 1.48 |
KG判 | 102 x 152 | 1 : 1.49 |
2L判 | 127 x 178 | 1 : 1.4 |
グランド | 127 x 210 | 1 : 1.65 |
六切 | 203 x 254 | 1 : 1.25 |
ワイド六切 | 203 x 305 | 1 : 1.5 |
A4 | 210 x 297 | 1 : 1.41 |
四切 | 254 x 305 | 1 : 1.2 |
ワイド四切 | 254 x 365 | 1 : 1.44 |
A3 | 297 x 420 | 1 : 1.41 |
A3+(ノビ) | 329 x 483 | 1 : 1.47 |
A2 | 420 x 597 | 1 : 1.41 |
これでいけば、
APS-C、35mmフルサイズカメラ使用の場合:
はがき、KG判、ワイド6切、ワイド4切、A3+(ノビ)サイズを含めたA判全般などへのプリントであれば比較的ケラレが少なくプリント可能であり、
コンデジ、フォサーズ、中判デジタル使用の場合:
DSC、2L判、6切サイズなどへのプリントであれば比較的ケラレが少なくプリント可能
ということが言えるのではないでしょうか。
黄金比率・白銀比率
では次に、答えがある問題ではありませんが、美しく見えるプリントとはどういうものか、比率の面から見ていきたいと思います。
現在の建築やデザインにもよく使用されており、美しく見えると言われる黄金比率・白銀比率というものがあります。
比率名 | 比率 |
---|---|
黄金比率 | 1 : 1.618 |
白銀比率 | 1 : 1.414 |
黄金比率とは?
古代ギリシャで発見されて以来、パルテノン神殿やピラミッドといった歴史的建造物、美術品の中に見出すことができることに加え、自然界においても、植物の葉の並び方や巻き貝の中に見付けることができる比率。
最も安定し美しい比率とされ、意図的に黄金比を意識して創作した芸術家も数多いとされています。
黄金比率の1:1.618は写真サイズで言えば、集合写真などに使われるグランドが一番近いサイズになります。
集合写真に感じる安定感や収まりの良さはこういった黄金比率に近いということから来ているのかもしれません。
また、写真編集ソフトPhotoshopやLightroomにはトリミング機能において、この黄金比で切り取るイメージを確認できる機能が実装されており、参考の一つにできます。
白銀比とは?
白銀比率は “大和比” と呼ばれるほど日本に根付いた比のため、日本建築にも古くから用いられているおり、
法隆寺や薬師三尊像など日本古来の建築や彫刻に白銀比がベースとなっていると言われています。
白銀比率の1:1.414は写真サイズで言えば、L判、2L判、A判全般が近いサイズになります。
牟田 淳氏の著書:アートのための数学によれば、日本人には黄金比よりも白銀比の方が歴史的にも馴染みがあるとしています。例の一つとして、下図は『日本人を対象にどのような比の四角形が好きか』調べた統計が著作の中で紹介されており、黄金比より白銀比や正方形の方が人気が高いということが伺えます。
今回はカメラ、プリント、イメージにまつわる比率から写真というものを見てみました。
写真作りの参考までに。