ハーネミューレ、キャンソン、ピクトリコ、、、ファインアート紙のサプライヤーは多く、用紙の種類も多岐に上ります。選択肢が多いというのは良い事もある反面、どれを選んだら良いのか悩みの原因にもなります。
そこで今回は現在(2015年5月時点)日本で市販されており入手できるファインアート紙を系統別に分類し、どう使い分けができるのかに焦点を当てていきます。
全サプライヤー、全用紙を網羅できているという訳ではありませんが、ご参考までに。
ファインアート紙関連まとめ
・ファインアート紙について
・市販ファインアート紙の分類と使い分け <-- 今ここ
ファインアート紙の系統分け
先の記事『ファインアート紙について』でも触れましたが、ファインアート用紙をルーツ別に系統分けを行えば、
下5系統に集約されます。
1. 版画紙系
2. 水彩紙系
3. 暗室写真紙系
4. 伝統紙基材と暗室写真紙の融合系
5. 和紙系/その他
それぞれのファインアート紙の由来・ルーツが分かれば自身の創作内容と照らし合わせ、どの系統の用紙でプリントすれば良いのかも理解しやすくなります。
系統別に一つずつ見ていきます。
1. 版画紙系
コットン100%、プリントの長期保存性、無光沢(Matt)面質などをうたう版画紙をルーツにもつこの系統がファインアート紙の中でのスタンダードと言えるでしょう。
ルーツは版画紙ということで、美術系絵画の複製やイラストに最適ではありますが、写真においても昔に比べ、光沢紙ではなくマット紙に出力するというニーズも高まってきており、写真用途としも重宝されています。
この版画紙系統には、『滑らか(Smooth)』と『荒い(Textured)』タイプの2種の肌目があり、市販のファインアート紙においては以下が当てはまります。
滑らか(Smooth)
ブランド | 用紙名 |
---|---|
アートプラス | スムースラグホワイト315 |
イルフォード | ゴールドコットンスムース |
キャンソン | ラグフォトグラフィック |
ハーネミューレ | フォトラグ |
ハーネミューレ | フォトラグブライトホワイト |
PCM竹尾 | かきた |
荒い(Textured)
ブランド | 用紙名 |
---|---|
アートプラス | ウォームトーンエッチング315 |
イルフォード | ゴールドコットンテクスチャード |
キャンソン | BFK Rives |
キャンソン | エディションエッチングラグ |
ハーネミューレ | ジャーマンエッチング |
筆者の個人的な意見として、版画紙系における両紙は、『滑らか(smooth)』と『荒い(textured)』という対極な言葉のイメージに比べ、用紙の肌目にはそこまで大きな違いはないと感じています。
『滑らか(Smooth)』、『荒い(Textured)』を一括りにして、版画紙系から1種自分のお気に入りの無光沢(Matt)面質のファインアート紙を見つけるというアプローチで臨めば、選択範囲も絞れ、用紙の種類の多さにも惑わされないのではないでしょうか。
(*ただ唯一、ハーネミューレ社のジャーマンエッチングのみ版画紙系でありながら、かなり個性の強い水彩紙系のような『荒い(textured)』肌目となっています。)
その他、使用に当たり気をつける点としては、初見の場合、『滑らか(Smooth)』・『荒い(Textured)』共に裏表が分かりずらくなっていますので、開封や保管の際はインク受容層はどちらか注意を払う必要があります。
2. 水彩紙系
伝統的な美術用水彩紙をルーツにもつこのタイプは、コットン100%やαセルロースという基材に、個性の強い独特な肌目を持つ無光沢(Matt)面質が特徴的です。
表記には、版画紙系と同じ『荒い(Textured)』の言葉が使わていますが、水彩紙系の『荒い(Textured)』肌目は版画紙系のそれと比べ、大きな違いがあります。具体的にどのような肌目かイメージしたい方は、一般のアナログ水彩紙とはどういうものか調べてみると理解できると思います。
用途としては、水彩画、美術系絵画の複製やイラストには最適です。
市販のファインアート紙においては以下が当てはまります。
ブランド | 用紙名 |
---|---|
アートプラス | デジタルアクアレル320 |
キャンソン | アルシュ アクアレル ラグ |
ハーネミューレ | アルブレヒト デューラ |
ハーネミューレ | トーション |
ハーネミューレ | ウイリアムターナー |
PCM竹尾 | DEEP PVモロー |
筆者の個人的な見解として、非常に個性の強い特徴的な肌目であるため、自身の創作内容と上手くはまれば面白い系統の用紙であると感じます。
ただ、写真用途としての使用は少し慎重になるべきでしょう。写真を使う場合は、肌目にあった画像を選択したり、絵画調にデジタル加工したりするなどして用紙の風合いとの兼ね合いを考慮する必要があります。
小話までですが、ハーネミューレ社の『アルブレヒト・デューラー』や『ウィリアム・ターナー』の水彩紙系ファインアート用紙の名称は、欧州の実在した有名画家の名前にちなんでいます。
3. 暗室写真紙系
αセルロースに伝統的な写真印画紙と同じバライタ(硫酸バリウム)コート層が施された基材に、インク受容層を設けインクジェット対応させた光沢(Gloss)面質を持つ暗室写真紙系。
この系統の『光沢(Gloss)』面質というものは、一般的なRC写真紙におけるピカピカ一辺倒の『光沢(Gloss)』面質とは異なり、どう表現すれば良いのかわかりませんが、用紙表面に牛肉の霜降りのような微細な肌目と光沢加減に違いがあります。
用途としては、写真のために開発された用紙であり、写真目的に使用するのが最も適していますが、絵画の複製としても微細な肌目の光沢(Gloss)面質が油絵のそれを似ており面白いとも感じます。
市販のファインアート紙においては以下が当てはまります。
ブランド | 用紙名 |
---|---|
イノーバ | ウルトラスムースグロス |
キャンソン | バライタ フォトグラフィック |
ハーネミューレ | ファインアートバライタ |
ピクトリコ | GEKKO シルバー・ラベル |
もともと光沢感を抑えた微細な光沢(Gloss)面質になりますが、更に光沢感を抑えたタイプも存在し、サテン、シルク、パールなどと呼ばれています。
ブランド | 用紙名 |
---|---|
イルフォード | ゴールドファイバーシルク |
ハーネミューレ | ファインアートパール |
4. 伝統紙基材と暗室写真紙の融合系
日本の和紙、欧州のコットンといった伝統紙基材と暗室写真紙の微細な光沢(Gloss)面質を併せ持つ融合系。
ファインアート紙の最高峰とも見なされ、各ブランドにおいて、値段的にも一番高い系統になります。
どのブランドも長期保存性と風合いを兼ねそろえた基材上に、光沢感を抑えた上品な面質を持ち1枚の価値を感じる用紙となっています。
市販のファインアート紙においては以下が当てはまります。
ブランド | 用紙名 |
---|---|
アートプラス | ロイヤルコットンバライタ330 |
キャンソン | プラチナファイバーラグ |
ハーネミューレ | フォトラグバライタ |
ピクトラン | ピクトラン局紙バライタ |
マジックリー | シルバーラグ |
面質自体は暗室写真紙系と大きな違いはないため、1枚の品位を重視するのであれば『融合系』、コスト重視や両面テープなどで台紙や木製パネルに貼付けを行うのであれば『暗室写真紙系』を選択するというような使い分けができるのではないでしょうか。
5. 和紙系/その他
伝統的な日本の和紙や漆喰紙をインクジェット対応させた用紙も存在します。
それぞれ用紙の種類が多いためサイトURLの紹介までに。
ブランド | URL |
---|---|
アワガミ | www.awagami.jp |
伊勢和紙 | isewashi.co.jp |
フレスコジクレー | www.fresco-g.com |