カラーマネージメントにおいて、どういう環境光下でプリントを見るかというのは重要な要素です。
初めて色評価用照明下で見る写真プリントには、皆驚かされることでしょう。鮮やかな色彩はもちろん、今まで一般の環境下では、同じような白地にしか見えなかったそれぞれ用紙が、白色度の違いにより、それぞれ異なった白地であることが、はっきりと区別できるようになります。
では、色評価用の照明とはどういうもので、どれを選べばいいのか?本まとめを参考にして頂ければ幸いです。
カラーマネージメント関連まとめ
・カラーマネージメント基礎(照明編) <-- 今ここ
・カラーマネージメント基礎(モニター編)
・カラーマネージメント基礎(プロファイル編)
照明選びのポイント
カラーマネージメント用途の照明を選定する場合、以下2点の数値を考慮する必要があります。
1. 色温度(TC)
2. 演色性(RA)
一つずつ順に説明していきます。
色温度について
色温度とは
単位は「K」(ケルビン)を用い光源から出てくる光の色のちがいを、温度になぞらえて表したものを言います。
Kの数値が低いと赤っぽい光、高いと青白っぽい光、ということになります。
当然、肉眼には赤っぽい光に照らされた対象は赤っぽく見え、青白っぽい光に照らされた対象は青白っぽく見えるようになります。ですので、適切な色温度の照明の選択が、正しい色を確認するには重要となってくる訳です。
カラーマネージメントにおいては、『出力プリントを確認する照明』の他には、『画像データを確認するモニター』の2つの色温度を考慮する必要があります。
選ぶべき色温度
カラーマネージメント用途でどういった色温度を選ぶべきかは諸説様々あり、業界や用途によっても異なってきます。
一般によく使用される色温度は以下になり、それぞれの数値の色評価用照明も市販されています。
5000K : 印刷業界の標準
5500K : 日中の太陽光に近い、ギャラリー・美術館の環境光に多い
6500K : sRGB,Adobe RGBの白色度、モニター初期設定に多い
写真用途でモニターと事務所・自宅インクジェットプリンターのプリントのマッチングの話に限定すれば、現在、絶対的な基準がある状況ではないため、自身の好みで決めてしまってかまわないと考えます。
カラーマネージメントを理解して使いこなせるということは、各状況に応じて、臨機応援に色(カラー)を管理(マネージメント)できる能力になりますので、あまり特定の設定・数字に固執する必要はありません。
ちなみに筆者は、モニター色温度を5000Kや5500Kと設定した場合、画面が黄ばんでいるように感じてしまい、馴染めないため、モニターの色温度を6500Kとして、照明も6500Kのものに併せています。
演色性について
演色性とは
照明などの発光体が、ある対象を照らしたときに、その対象の色の見え方に及ぼす光源の性質の事を言います。
対象が最も自然な見え方をする太陽光を演色評価数Ra:100の基準とし、100に近いほど演色性が優れており、かけ離れたものほど劣ると考えられています。
下図は演色性が高低の比較になります。
演色性が高い光に照らされた場合、対象は色つやよく輪郭もくっきりしているように見えるのに対し、低い場合は対象の色がやや霞んでいるように見えます。
選ぶべき演色評価数
では具体的にプリントの色評価やモニターとのマッチングの視認を行うにはどの程度の演色評価数を持つ照明を選べばいいのか?
CIE(国際照明委員会)の空間別推奨Raの資料によれば、Ra:90以上が色比較・監査、臨床検査、美術館用途に好ましいとされています。
市販されている色評価用照明
今までの上記内容から色評価用の照明というのは、『色温度』と『高演評価数Ra:90以上』がポイントであることが分かったと思います。
下リストでは、両方を兼ねそろえた色評価に適する照明を取り上げています。
色温度5000Kの照明であれば、各社メーカーが発売していますが、太陽の色に最も近いとされる5500Kやモニターの初期設定でよく使用されている6500Kの照明は選択肢が少なく、値段も高くなります。
高演色20形直管蛍光照明リスト
メーカー | モデル型番 | 色温度 | 演色評価数 |
---|---|---|---|
日立 | FL20S・N-EDL-NU | 5000K | Ra:99 |
東芝 | FL20SN-EDL | 5000K | Ra:99 |
三菱電機 | FL20S・N-EDL・NU | 5000K | Ra:99 |
パナソニック | FL20S・N-EDL | 5000K | Ra:99 |
Light Sources Inc | VITALITE T-18 | 5500K | Ra:91 |
東芝 | FL20S.D-EDL-D65 | 6500K | Ra:98 |
どうしても色評価用の照明でライトスタンドで使用できるものといえば、直管タイプの20形ばかりになり、使用できるライトスタンドも山田照明のZライト一択というように限られてきます。
しかし、一部コンパクト形でも演色評価数が90越えするタイプの照明も存在がするので、上手く活用できれば、ライトスタンドの選択の幅も広がります。
高演色27形コンパクト形照明
メーカー | モデル型番 | 色温度 | 演色評価数 |
---|---|---|---|
三菱電気 | FPL27ANX | 5500K | Ra:95 |
照明モデル型番の豆知識
上記の各社蛍光灯のモデル型番、メーカーは違えど共通点はあることがわかります。
それぞれの型番は何を示しているのか、日立の照明カタログにわかやりやく図解されているので、参考までに。
例えば、各種色評価用蛍光灯のモデル型番の最初に共通していた『FL20』。
これは『FL』は照明の形状・点灯方式を示しており、『直管スタータ形』ということになります。
また、『20』というのは直管蛍光ランプの大きさを意味しており、全長『580mm』の長さであることがわかります。
モデル型番の意味
照明の形状・大きさ
こういったモデル型番の意味や照明の形状などわかってくれば、この照明にはどんな照明スタンドを選ぶべきか?、また逆に、この照明スタンドに合う照明のモデル型番はどのようなものか?などが理解できるようになります。