カラーマネージメントシステム(CMS)の要であるICCプロファイル。
デジタルフォトで使用する入力、表示、出力の各デバイスには既に組み込まれており、普段意識せずお世話になっている方も多いのではないでしょうか。
そもそもICCプロファイルとはどういうものか?より深く理解することで、色再現時における想定外を未然に防ぐのに役立ちます。
カラーマネージメント関連まとめ
・カラーマネージメント基礎(照明編)
・カラーマネージメント基礎(モニター編)
・カラーマネージメント基礎(プロファイル編) <-- 今ここ
ICCプロファイルの役割
ICCプロファイルとは
ICCプロファイルは、現在のカラーマネージメントの要であり、デバイスのカラースペースや色再現特性が記述されたデータファイルになります。
RGBとCMYKの変換を行う際や、モニターやプリンタで出力する色を調整する際に参照したり、色の変換テーブル用にRGB,CMYKとCIE Lab値の双方が記述されています。これらの特性が各デバイスでの正確な色の再現を手助けする役割を担っています。
少々難しい内容ですが、要するに、カメラ(入力)、モニター(表示)、プリンタ(出力)といったそれぞれの機器を、様々な異なるメーカーが作っていますが、各社このICCプロファイルに準拠・運用することにより、メーカーや機器が違えど統一された正しい色再現が可能となっているということです。
これにより、例えば、カメラで撮影された赤いリンゴは、モニターで表示されても、プリンタで出力されても赤いリンゴに色統一されるという訳です。
ICCプロファイルイメージ
カラーマネジメント動作とレンダリングインテント
ICCプロファイルによるカラーマネージメント動作
では次に、実際の動作に関して見ていきたいと思います。
例えば、デジカメでの撮影データが RGB=255,225,110(デバイス固有値)の色とした場合、このデータをインクジェットプリンタで正しい色にプリントするには、まずカメラ(入力)プロファイルが CIE LAB 共通色空間 (CIE LAB=93,13,10) に変換します。
次に、プリンタ(出力)プロファイルが、CIE LAB=93,13,10の色を再現するための出力デバイスRGB固有値(250,227,120) に変換します。この固有値をプリンタが出力すれば、もとの撮影データと同じ色 (CIE LAB=93,13,10) を再現することができます。
要するに、デバイスごとに異なるRGB値を共通のCIE LABに一度変換してその色に相当する値をデバイスが出力することで色再現ができる仕組みとなっています。
カラーマネージメント動作イメージ図
色変換、レンダリングインテント
カラーマネージメントの動作を語る際、もう一つレンダリングインテントにも触れておく必要があります。
これは、色空間の変換をどのような意図(インテント)で行うかということになります。
ICCプロファイルには、色再現領域が変換時に狭くなる場合の処理についての4種類の色変換テーブル(レンダリングインテント)が用意されています。
ちなみに、レンダリングインテントの方法4種類は下記になります。
Photoshopなどを使い写真プリントを行った事ある方なら誰しも覚えがあるのではないでしょうか。
・知覚的(perceptual)
・彩度(saturation)
・相対的な色域を維持(relative colorimetric)
・絶対的な色域を維持(absolute colorimetric)
色域縮小変換のイメージ図
その他の関連する話で言えば、例えば、Adobe RGBで撮影した写真をPhotoshop でWeb用(JPEG)画像に保存すると、大きく色が変わってしまったという経験をお持ちの方も多いと思います。
これはPhotoshopのWeb用画像に保存は、自動的にsRGBに変換され保存され、その際のレンダリングインテントが意図しない方法にて行われることに起因するものです。この問題の解決方法としては、事前にPhotoshopの機能であるプロファイル変換を行い、レンダリングインテントの方法を決めておくことで解決出来ます。
標準プロファイルとカスタムプロファイル
またICCプロファイルには、標準プロファイルとカスタムプロファイルの2種類があります。
標準プロファイル
標準プロファイルは、各デバイスメーカーによって各々作成されています。デバイスを購入した際に既にインストール・初期設定されているものがそれに当たります。
カスタムプロファイル
ただ、標準プロファイルでは、モニター(表示デバイス)では、機器の個体差や経年劣化による色変化などが考慮されておらず、プリンタ(出力デバイス)では、更にインクやプリント用紙のよる兼ね合いによる色再現の違いも影響してくることになります。
そのため、x-rite社製品などの計測機器やソフトを使い、各々の使用環境に応じたカスタムプロファイルを作成し、標準プロファイルを上書きすることも可能となっています。
よく見かける下画像は、それぞれモニター用(表示デバイス)とプリンタ用(出力デバイス)のカスタムプロファイルを作成している所になります。
基準カラースペース(色域)
これまでの説明から現在のカラーマネジメントでは、ICCプロファイルが運用の肝である事がわかったと思います。
ICCプロファイルは機材の色特性を測って記述したファイルになりますが、また、これとは別に、デバイス(機材)を測定せずに理論的に定めたカラースペース(色域)があり、『Adobe RGB』、『sRGB』、『HSL』、『DCI』などの各種企業・団体が定めた基準規格がそれにあたります。
仮にこうした基準カラースペースがない場合、AとBという2つのモニターを色合わせする場合、Aを基準モニターとして定めたとしても、モニター毎に個体差、経年劣化スピード、色の変化も違ってくるため、結果として、数か月後にはAの基準色自体が変わってしまいます。
そこで対策として考案されたのが理論的なカラースペースを使った色管理方法になります。
特定のデバイスを基準にせず、1つのカラースペースにデバイスの方を合わせるという手法となります。
例えば、モニターなどが経年劣化で色の変化を起こしても、基準カラースペースに併せるキャリブレーションを行えば、元の基準の色に戻せるという訳です。
モニターだけではなく、その他カメラ、プリンタ、スキャナーなどのデバイスも、この基準カラースペースに合わせて作られているため、カラーマネージメント実施にあたり、自身の撮影→エディット→プリントのワークフローのパイプラインを通すこの基準カラースペース(Adobe RGB か sRGB)をあらかじめ決定しておいた方が便利で管理もし易くなります。